2017年9月 by 北の快適工房 こんにちは、北の快適工房代表の木下勝寿です。全国的には、まだまだ気温の高い日が続いているかと思いますが、北海道では9月になると、葉の端がうっすら色づきはじめる木々もちらほら。そんな彩りに秋の訪れを感じる、今日この頃です。さて、先月はお盆でしたね。故郷に帰省された方も多いのではないでしょうか。今回は私がスタッフから聞いた話の中から、ある女性スタッフのお盆のエピソードを紹介させてください。彼女は家族と、祖父母の暮らす北海道のやや北側に位置する士別(しべつ)市を訪れました。士別市はめん羊の1種である「サフォーク」の牧畜が盛んで、街の中心部から15分ほど車を走らせると、ほのぼのとした牧歌的な風景が広がっています。(↑赤い星印が士別市、白い星印が釧路市です。)(↑草を夢中に食べている様子がなんともかわいらしいですね。) そして、彼女には訪れるたびに楽しみにしている、ある食べ物があります。それは彼女のおばあちゃんが作る「ザンギ」です。ザンギとは、味付けをした鶏肉に衣を付けて揚げたもの。北海道の東側にある釧路市が発祥といわれている料理です。鶏の唐揚げというと分かりやすいかもしれませんが、北海道の中では、全く別の料理!という方もいれば、同じもの!という方もいます。明確な違いを説明するのは難しいのですが、とにかく、ザンギは北海道民にとって家庭料理の代表であり、居酒屋や回転寿司でも必ずといってよいほどの定番メニュー。子供から大人まで広く愛されている料理なのです。さて、彼女がおじいちゃん、おばあちゃんのお家に着くと、「鶏肉は買ってあるからね」と、既に準備万端。何もいわずとも、彼女が食べたがるものはお見通しだったようです。彼女が幼かった頃は「油でやけどをするかもしれないから」と、おばあちゃんがザンギを作っている様子を横から覗いているばかりでしたが、成長するにつれ、揚げるところまで手伝うようになったとのこと。おばあちゃんの作るザンギが美味しい一番の“秘訣”は、なんといっても「下味」。鶏肉をたっぷりのニンニクやショウガ、醤油、そして衣に必要な片栗粉も一緒に混ぜ込み、一晩かけて寝かせるんだそうです。確かに、これはおいしいザンギができあがりそう。味が染み込むまでは、今すぐ揚げて食べてしまいたい気持ちを抑えて、ガマンです。漬け込むこと1日、彼女もおばあちゃんと一緒に揚げていきます。火加減や揚げる時間に絶妙な調整が必要ですが、そこは、おばあちゃんの熟年の勘が光ります。彼女もコツを教わりながら、「ジュッ」とリズムよく揚げていき、いよいよお待ちかねのザンギが完成!(↑こんがり揚がって美味しそう!)噛んだ瞬間に良い香りが鼻を抜け、肉汁が溢れます。おばあちゃんの長年の経験が詰まった美味しさに、自然と顔がほころんでしまったのだそうです。そんな彼女ですが、子供の頃は1年の間に何度も帰省できていたものの、ここ数年はなかなか都合が合わず、頻度が減ってしまっていたそうです。だからこそ今年、おばあちゃんと「最近こんなことがあってね」、「昔はこんなことがあったね」と、話を弾ませながらザンギを作り、家族みんなと食卓を囲んだことが、心温まる、大好きな時間だったのだとか。きっと、彼女がザンギを好きな理由は、ザンギそのものはもちろんのこと、それを囲む家族との楽しい時間もあるからなのだと、私は思いました。この話を聞き、私も子供の頃の食卓の風景や、母が台所に立っている後ろ姿、そして、家族と交わした何気ない会話の数々を思い出し、ふと、おふくろの味が恋しくなってしまいました。私も来年のお盆は実家に顔を出し、懐かしい母の味と共に、昔話に花を咲かせられたらと思っています。そして私たち北の快適工房も、お客様の「家族」のように、これからも皆様に寄り添い続ける存在でありたいと思います。したっけ(北海道では「それじゃあ」のことを「したっけ」といいます。)、来月もお手紙を書かせていただきますね。北の快適工房代表 木下勝寿